「ひかりの輪」代表の上祐史浩氏(撮影/大谷百合絵)

「ひかりの輪」が宗教を掲げない理由

――麻原脱却の証しを社会に示す努力、理解を得るための努力は報われてきていると思いますか。

 結果に頓着せず、ひたすらに積み上げていくことが大切なのでしょうから、ひとつには賠償という実行で示しています。もうひとつは、(オウムの危険性を引き継いでいる)アレフの清算のため、アレフからの信者の脱会支援を続けていて、これまでに200件近くになります。

――現在の賠償額は月々50万円ですが、原資はどこから?

 仏教や心理学のセミナーや、パワースポット巡り、ヨーガ教室をやっているので、その参加料やセミナー料、あとは団体の専従スタッフによる外でのアルバイト収入、この2つを合わせたのが主な収入源です。2年前からはアレフによる賠償の望みが完全についえたこともあって、「ひかりの輪」からの賠償金の支払いを倍増させていただきました。

――30年も経つと高齢化の問題も出てきます。

 オウム真理教の時から、現実に生活能力のない人は結構います。ここへ来て、老化もあって、その対応はちょっと大変です。50代後半から60代前半が多く、昔ほどの収入はなく、生活能力が平均以下の人もいます。これで5年後もちゃんと生活できるのか。知り合いのバイトを紹介するなどして経済支援しています。生活保護はなるべく受給せず、国・社会の負担にならないようにやろうとする彼らの気持ちもありますから。

――ひかりの輪は「新しい智恵の学び場」を標榜しています。宗教を掲げないのはなぜですか。宗教団体ならお布施が集まり、組織力が備わって賠償も進むと思うのですが。

 これまでの経験と探求の結論として、いわゆる宗教を脱却した思想・精神性の追求が必要だと思いました。独善的で暴力的な原理主義的な宗教思想は歴史的に繰り返されてきました。オウムはその流れの平成の結末だったかなと思う。今皆さんが宗教と呼ぶものは、本質的に独善性、善悪二元論のカルト性を持っているものが多く、そのイメージも強い。どこかで独善的な妄信があり、それを根っこから断たないといけない。オウム的なものを繰り返さないためには、そういった要素を払拭しなければいけないと考えます。我々の場合は、宗教から脱却して、仏教を仏教哲学・仏教心理学、高度な心理療法と解釈し、現代の心理学と共に学習・実践する教室を行っています。宗教を超越したい、というのが目指すところなのではないかと思います。

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10年ごとに変化する「アレフ」の実態