
3月6日、トランプ大統領は日米安全保障条約について「我々は日本を守らなくてはならないが、日本は我々を守る必要はない」と発言し、対日防衛義務の「不公平感」をにじませた。トランプ氏の狙いはどこにあるのか。AERA 2025年3月24日号より。
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日本にはトランプ氏が求めた「日本による対米防衛義務」を目指した政治家がいる。安倍晋三氏は04年に出版した著書『この国を守る決意』の中で「(日米安保条約の)双務性を高めるには集団的自衛権の行使が必要だと思います」と主張した。
その言葉通り、安倍政権は、15年に安全保障法制を制定して、集団的自衛権の行使を一部解禁した。そして「安倍政治」を引き継いだ岸田文雄政権は「敵基地攻撃能力の保有」「防衛費の対GDP2%」を閣議決定した。
憲法第9条は一言一句、変わっていないにもかかわらず、安倍政権によって第9条から導き出された「海外で武力行使しない」という1本目の柱が倒され、岸田政権によって「専守防衛=戦力を保持しない」という残る2本目の柱が倒された。法律や閣議で憲法を空文化する「法の下克上」が行われ、日本は強力な軍事力を有する「普通の国」に変身した。

トランプ氏が日本の安全保障政策の大転換を知らないはずがない。やはり、発言の狙いは米国製兵器のさらなる「爆買い」を求めることにあるのだろう。
石破茂首相との会談後の日米共同声明には「米国は(略)27年度より後も抜本的に防衛力を強化していくことに対する日本のコミットメントを歓迎した」とある。国内で一切議論されていない27年度以降の防衛費について、石破氏はさらなる増加を米側に約束した。大統領が代わっても、首相が代わっても揺らぐことのない対米追従の絶対的な姿勢。トランプ氏の狙いは半ば実現している。(防衛ジャーナリスト・半田滋)

※AERA 2025年3月24日号

