高橋大輔(画像は筆者提供)

――一般的には悪役である温羅を演じることについてはいかがですか

 悪役なんですけど、自分自身は悪だと思っていないから、難しいなって思いますよね(笑)。堤さんがどういう演出を考えてくるかによって、気持ちは変えていかなくてはいけないと思います。でも(吉備津彦・温羅の)二人とも、多分ただただ一生懸命過ごしているだけなんだろうなと思うので、わざわざ悪役をやる必要はないかなって。「温羅」という人物として、やるべきだろうなと思っていますね。それを悪役とみる方もいれば、悲しい人とみる方もいる。どちらに共感するかは、お客様次第かなと。ただ、どう自分自身が変わっていくかという見せ方は、いろいろ考えつつやっていかなくてはいけないと思います。

――「氷艶 hyoen 2019 -月光かりの如く-」で初めて挑戦された歌と台詞にも、自信がついてきたのではないでしょうか

 いや、もうやればやるほど、自信がつかないですね。本職でやっていられる方って、やっぱり素晴らしいですし。やればやるほど、「全然出来ていない」と思うようになって。だから満足することはなくて、逆にその分やりがいがあるというか。出来ない自分が嫌になる時もありますけど、「そこを乗り越えてやるんだ」というモチベーションにもなるし、評価された時は嬉しいですし。でも、新しいものをやるとまた自信をなくすでしょうし、ずっとその“行ったり来たり”なんじゃないでしょうかね。ただ毎回、「自分は“演じる”ということが好きなんだ」と思います。

――高橋さんは選手時代から、素晴らしい演技をしているのに謙虚だと感じていましたが、その感じ方が力の源でもあるのでしょうか

 謙虚だとは自分では全く思っていなくて、実際にそうだなと思っていて。僕自身エンタメが好きなので、多分スケートだけで比べていないというか。素晴らしいダンサーさんや役者さんと自分を比べているからかもしれないです。素直に、「駄目だな、出来てないな」と思っているだけなんですけどね。

 多分、エンタメの世界で活躍されている方々への憧れが強いんだと思います。そこにいけない悔しさが、パワーにはなっていますね。悔しさというか、「いいな、ああなりたいな」と思うんでしょうね。

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高橋大輔が「新たに見せたいもの」とは…