
南海トラフ地震で巨大津波が想定される高知県黒潮町で、「日本一の防災の町」を掲げた取り組みが続く。その一環である「にげる缶詰プロジェクト」とは──。AERA 2025年3月17日号より。
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高知県黒潮町では今、「にげる缶詰」という名の、風変わりな缶詰の商品化に向けた準備が進んでいる。パッケージにはまず、走って逃げる人のピクトグラム。そして大きなひらがなで「にげる」とあり、ぐるりと缶を回すと反対側に「防災缶詰 おいしいごはん 鰹(かつお)飯」と書いてある。
缶詰の作り手は、黒潮町が防災事業の一環として2014年に開設した第三セクター「黒潮町缶詰製作所」である。10周年を記念し、高知県内でホームセンターなどを運営するフタガミとのコラボ企画として、缶詰を通して全国民の防災意識向上を目指す「にげる缶詰プロジェクト」を昨年12月に発表した。資金調達のためのクラウドファンディングでは目標額を超える581万円が集まり、まずはクラファンに協力した個人と団体への返礼品を完成させるべく、試作を繰り返している最中だ。
黒潮町では、南海トラフ地震が起きた場合、最大34.4メートルの津波が予測されている。12年3月に内閣府が設けた有識者の検討会が公表した被害想定で示されたもので、これを受けて町では「日本一の防災の町」を掲げ、町一丸となって対策に取り組んできた。「にげる缶詰」も、その延長線上にあるものだ。