「金(ゴールド)」と並んで注目されているのが「デジタルの金」とも呼ばれるビットコインです。そんななか、トランプ政権が3月に発表した「米国戦略的ビットコイン備蓄」は大きな話題を呼びました。当初、市場では「米政府がビットコインを大量に買い始めるのでは」と期待が高まりましたが、実際の内容はやや拍子抜けでした。備蓄されるビットコインは、あくまで犯罪捜査などで押収された分に限られ、政府が積極的に新たに買い入れるわけではないというのです。
これを受けて、ビットコイン価格は一時2.7%下落、他の暗号資産(イーサリアム、カルダノ、ソラナ、XRP)も軒並み値を下げました。「国家備蓄」にはビットコイン以外の暗号資産も含まれるとのことですが、追加取得は予定していないとされます。
通貨価値は共同幻想
フィナンシャル・タイムズ(FT)(*1)によると、ホワイトハウスの暗号資産担当者であるデビッド・サックス氏は、「ビットコイン備蓄は“デジタルのフォートノックス(米国金庫)”だ」と強調し、米政府はすでに20万ビットコイン(2兆円超相当)を保有していると明かしました。ただし、これはあくまで押収によるものであり、市場にインパクトを与える新規購入ではありません。
ただ、今回の一連の動きは、「政府がビットコインを戦略資産と認識し始めた」という点で、長期的には重要な転換点かもしれません。世界が不確実性を増すなか、私たち個人投資家も「通貨の価値とは何か」「資産をどう守るべきか」「通貨価値は共同幻想で成立している」ということを改めて考える時期に来ているのかもしれません。金もビットコインも、“それ自体が価値を持つ”というより、“法定通貨に対する相対的な信認の低下”を映し出す鏡だとすれば、私たちの資産防衛の視野も、もう一段階広げていく必要があるのではないでしょうか。
(*1)
FT「Crypto prices fall as US strategic reserve plan disappoints traders」
https://www.ft.com/content/08a1f7f3-4be2-4f36-959d-4ac57213450b

