
先日、金(ゴールド)の専門家とお話しする機会がありました。その方は、単なる評論家ではなく、実際に貴金属を扱う実業家でもあります。対話の中で一致したのは、「金(ゴールド)の価値が上がっているというより、法定通貨の価値が下がっているだけではないか」という視点です。言い換えれば、金の輝きが増しているのではなく、通貨が静かに弱まっているということです。
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その背景にあるのが、世界の地政学的リスクと通貨体制の揺らぎです。2025年、トランプ米大統領が再び誕生したことで、国際秩序はさらに多極化へと進み、各国が自国の安全保障や経済基盤を自立的に再構築せざるを得ない状況になっています。ところが、不思議なことに、従来のような「有事のドル買い」は起きていません。むしろその逆で、基軸通貨であるドルに対する不信感がじわじわと広がり、ドルインデックス(ドルの総合的な強さを示す指標)は下落傾向にあります。
次の世代へバトン
これは冷静に考えれば当然かもしれません。歴史を振り返れば、基軸通貨は永遠ではないからです。かつてスペイン銀貨、オランダ・ギルダー、イギリス・ポンドが世界経済の中心だった時代がありましたが、100年も持たなかった通貨が多かったと記憶しています。戦後急速に台頭した米ドルも、もしかすると次の世代へバトンを渡す節目に来ているのかもしれません。