
(遺族の許可を得て提供)
特殊清掃の現場は孤独死や自殺だけではない。最近多いのは、多頭飼育によるペット臭だという。また、客の汚物で汚れたタクシーだったり、子どもの尿で汚れた自家用車だったりすることもある。排水管や受水槽、浄化槽の清掃、害虫駆除も行う。強烈な臭いや汚れが残る現場の後始末を行うには特殊な技術が必要で、異業種がいきなり参入してすぐにビジネスを始められるほど甘いものではないと宮田さんは強調する。
「特殊清掃の業者は非常に増えているものの、実際には業界のガイドラインがないのが問題です。うちの依頼の半数以上が『二次施工』なんです。『別の会社に特殊清掃してもらったけど、汚れも臭いも落ちない。何とかしてほしい』と連絡がくる。ハウスクリーニングと変わらない程度の清掃しかできないのに特殊清掃とうたっている業者もいます」
「生きる力」を伝え続ける
清掃をしっかりと行うのはもちろんだが、大事なのは故人や遺族に寄り添う気持ちだと、宮田さんは考えている。
「特殊清掃の仕事はエンディングサポート事業だと考えています。誰かの死に寄り添う、天国への引っ越し屋として、請け負っている感覚です。実際に業務を完了し、最後にご遺族の方に鍵をお渡しする際には『これですべて天国への引っ越しがおわりました。ありがとうございました』と合掌してお伝えしています」
思い通りの死を迎えられなかった人もいれば、もっと生きたかった人もいるだろう。特殊清掃の仕事を通して、天国へ引っ越しをする人を送りながら、今を生きる人々を支え、「生きる力」を伝え続けていきたいという。
「いつか、必ず、私たちにもお迎えが来るわけですからね」
死の現場を見続けてきたからこそ、その言葉が重い。
(AERA dot.編集部・大崎百紀)

