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 選択的夫婦別姓をめぐり、各党で議論が活発化している。どのような案が出ているのか。焦点は何か。AERA 2025年3月10日号より。

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 各党が動きを活発化させる中迎える後半国会。実際に何が起きるのか。

 自民党内では、党内議論をまとめる「氏制度のあり方に関する検討ワーキングチーム(WT)」が動き出したほか、保守派議員らが熱心に会合を開き、高市早苗前経済安全保障相や衛藤晟一元少子化対策担当、稲田朋美元防衛相らが私案を出している。いずれも「通称使用の拡大でほぼ問題は解決する」という考えがベースで選択的夫婦別姓の導入は認めていない案だ。ただ、運転免許証やパスポートなどの公的証明書に、旧姓の併記ではなく旧姓のみの記載も認めようとする点は新しい。高市案は旧姓併記の「田中(佐藤)」にすぎないが、稲田案では旧姓「佐藤」のみ記載でき、衛藤案では、どれも選べる。ただ、どちらかが改姓を余儀なくされることはかわりなく、公的な書類の姓と、日常的に使わないとはいえ戸籍上の姓が異なる仕組みは理解がむずかしいとの指摘がある。

子の姓の決め方が焦点

 一方、党内の推進派「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」は、96年に法制審がまとめた案に賛同を表明している。「夫婦は別姓を選ぶことができる」とした上で、結婚時に子どもの姓を決めておき、きょうだいの姓は統一するものだ。法制審の案では、すでに結婚している夫婦も、法律施行から1年間に限って配偶者とともに届けることで別姓を選ぶことができる。

 自民の連立パートナーの公明党も賛成の立場。01年、選択的夫婦別姓の導入を盛り込んだ独自案を国会に提出した実績があり、昨年末には斉藤鉄夫代表が首相と会談し、与党協議を提案するなど積極的だ。

 最大野党の立憲民主党は2月、選択的夫婦別姓の導入に向けて「実現本部」(辻元清美本部長)を設置。多くの野党に加え、公明や自民の一部からも賛同を得たうえで、民法改正案の提出をめざす。野田佳彦代表は「できるだけ多くの野党が参加できる法案をつくる」とする。

 野党や公明党がかつて提出した案では、子の姓は出生時に決めるとされ、きょうだいで姓が異なることがあり得る。国民民主党は、子の姓の決め方について議論が不十分として再検討するという。選択的夫婦別姓実現をめざす勢力にとっては、子の氏の決め方などで一致できるかどうかが焦点になりそうだ。

 今のところ、国会に法案が提出されるのは4月以降とみられている。最後の大波になるのか。後半国会に注目が集まる。(朝日新聞記者・岡林佐和)

AERA 2025年3月10日号より抜粋

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