もう一つは、ネコはよそよそしく孤独を愛すると言われるが、日本の猫島で見られるように、エサが豊富にある状況では意外にライオンと同じようにヒエラルキーが存在することである。
CIAが1960年代にネコをスパイ活動に利用したアコースティック・キティーというプロジェクトでは、ミッションの初日、訓練されたネコが放たれた直後タクシーにひき殺された。本書にカルロス・ドリスコルの〈ネコは指示された仕事を実行しない〉話が出てくるが、ロソス氏は一蹴する。犬ほどではないが、ネコもエサをうまく使えば訓練できると自信を見せる。
日本でもそうだが、アメリカでもネコブームが静かに起きているという。〈淘汰の力を援用して、現代の生活にマッチしたネコをつくりだすべきなのかもしれない〉と本書の最後に書いているが、「ペットのネコは家から出ると鳥やシマリスを殺す。狩りをしたがらないネコが理想的なネコである」と言う。本書の執筆のために、自分のネコにGPSをつけて精緻な観察を行ったというから、その並々ならぬ努力には脱帽しかない。
(ジャーナリスト・大野和基)
※AERA 2025年3月10日号

