Jonathan B. Losos/1961年、アメリカ生まれ。進化生物学者。ハーバード大学教授を経て、現在セントルイス・ワシントン大学教授。著書に『生命の歴史は繰り返すのか? 進化の偶然と必然のナゾに実験で挑む』など(写真:大野和基)
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 AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。

【写真】進化生物学の第一人者であり大のネコ愛好家が贈るネコ本の決定版!

 進化生物学の第一人者であり大のネコ愛好家が贈るネコ本の決定版! トカゲ研究で名をはせた著者のジョナサン・B・ロソスさんが、一緒に暮らすネコとの豊富なエピソードを交えながら、イエネコがアフリカヤマネコから進化し家庭の一員となった過程を解説。最新の科学技術を駆使しながら、進化の歴史、ユニークな行動や遺伝的特徴の秘密、そしてネコの未来までを解き明かす『ネコはどうしてニャアと鳴くの? すべてのネコ好きに贈る魅惑のモフモフ生物学』。ロソスさんに同書にかける思いを聞いた。

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 ジョナサン・B・ロソス氏(63)と言えば、世界的に著名な進化生物学の第一人者であり、トカゲ研究で功成り名遂げた学者である。前著『生命の歴史は繰り返すのか?』では地球外生命体の存在確率にまで話が及ぶほどその知見の深さには驚かされる。その進化生物学者が『ネコはどうしてニャアと鳴くの?』という本を突然出版すると、同僚のみならず世界中の研究者を困惑させたという。

「私が5歳のときに家族が保護施設からネコを引き取り、それ以来ずっとネコを飼ってきたが、ネコを研究対象としてついぞ考えたことはなかった。自然環境にある生物体を研究したかったからです」

『ネコはどうしてニャアと鳴くの? すべてのネコ好きに贈る 魅惑のモフモフ生物学』(3630円〈税込み〉/化学同人)進化生物学の第一人者であり大のネコ愛好家が贈るネコ本の決定版! トカゲ研究で名をはせた著者が、一緒に暮らすネコとの豊富なエピソードを交えながら、イエネコがアフリカヤマネコから進化し家庭の一員となった過程を解説。最新の科学技術を駆使しながら、進化の歴史、ユニークな行動や遺伝的特徴の秘密、そしてネコの未来までを解き明かす

 ふとしたことからネコについてどれくらい研究がされているか調べたところ、多くの興味深い研究を発見したという。GPS追跡、ゲノムシークエンシングなど最先端技術を使ってネコの研究が活発にされていたのである。

「そこで私は謙虚な気持ちで、自分の専門である進化学の入門として〈ネコの科学〉というコースを設けた。進化学というと敬遠されがちだが、登録する学生が急増し、この作戦は魔法のようにうまく行った」と誇らしげに語る。進化学に興味を持たせるのにネコというテーマは格好の餌になったというわけだ。そのコースでは本書にも出てくるネコの進化の起原、生態学、行動学までありとあらゆる面を取り上げたが、ロソス氏自身が持っていた思い込みで、特に予想外であったことは二つある。

「世評通りネコ同士でもニャアと鳴くと思っていたが、実際は子が母親に向かってニャアと鳴く以外、ネコ同士では鳴きません。ネコがニャアと鳴くようになったのは、家畜化の過程で進化したイエネコの形質です」

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