
子どもの学校教育にかかる費用負担は社会課題だ。さまざまな自治体が軽減策を実施するなか、2月、東京都品川区が制服の無償化を発表した。「制服無償化」の動きは広がるのか。
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品川区が区立中の制服を無償化
2月5日、森澤恭子・品川区長は記者会見で2026年度から区立中学校の制服を無償化すると発表した。品川区は「民間調査などによると、教育にかかる費用のなかで学校制服は特に負担感が大きい、との結果を踏まえた」という。
確かに、1着(ブレザー)2万~5万5000円ほどもする制服の費用は、保護者に重くのしかかる。
だが、都内のほかの9つの区(荒川区、大田区、葛飾区、杉並区、墨田区、世田谷区、文京区、港区、目黒区)に問い合わせてみると、違う視点が見えてきた。
9つの区はいずれも、「現時点で、制服を無償化する予定はない」という。なかには、修学旅行費や学用品費など、さまざまな「無償化」を推し進める自治体もあった。
なぜ、制服は無償化の対象から外れたのか、各自治体の担当者に聞いた。
【港区】
港区は、「学びの環境の充実」をコンセプトに、教育にかかる費用の保護者負担の軽減を進めてきたという。その一つが、「国際人育成」を掲げて24年度から全区立中学校で行われているシンガポールへの修学旅行だ。保護者負担は7万円程度に抑え、それ以外の費用、総額約5億円を公費負担とした。
また、25年度からは区立小中学校の補助教材と学習材料を無償化するという。
制服が無償化の対象にならなかった理由を、同区の担当者はこう説明する。
「『学びの環境の充実』というコンセプトに沿って何を負担軽減の対象とするか、区分けすると、制服は公費支出にふさわしいものではないと考えます」(港区の担当者)
【世田谷区】
世田谷区も「『教育の質の底上げ』が方針」だという。