
2月18日、第7次エネルギー基本計画が閣議決定された。最大のポイントは「可能な限り原発依存度を低減する」というこれまでの大方針を放棄して、原発を「最大限活用する」という正反対の方針に切り替え、廃炉した原発基数分の建て替えをこれまでのように廃炉した原発の敷地内に限らず、同じ電力会社の別の原発敷地内でもできるようにしたことだ。
そもそも原発はあってはならない電源である。その理由はいくつもある。
第一に、日本に建設されている原発は安全ではない。「日本に」と限定するのは、日本は他の原発立地国と異なり、世界で最も多くの巨大地震が生じる地域の一つにあるからだ。他の国と異なり、特に厳格な耐震性が求められることを意味する。
しかし、実際には、原発ごとに定められた基準地震動(その数値が示す強度の地震までは耐えられるという数字。それ以上の地震が起きることはないとされている)を上回る強い地震に何回も見舞われている。
2011年の東日本大震災における最大の揺れは、2933ガルであった。日本で観測された過去最大の揺れは、08年の岩手宮城内陸地震の4022ガルである。民間のハウスメーカーは、「耐震住宅」の販売に力を入れている。そこで採用されている耐震設計基準は、例えば、三井ホームで5115ガル、住友林業で3406ガルである。
それを知れば、原発が採用する基準地震動はこれらを超えると考えるのが当然だが、実際には、稼働中の原発の中で最も高い東北電力の女川原発2号機でも、たったの1000ガルである。民間耐震住宅の足元にも及ばない。
それでも、電力会社は、自社の原発の敷地の中だけは、決して強大な揺れは生じないと言い続けている。しかし、どこでどれだけの強さの地震が起きるかについて予見できないのに、どうして、自社の敷地内だけは大きな揺れが来ないと予知できるのだろうか。この一事だけでも、日本の原発が危ないことは明らかだ。
日本の原発について、もう一つの問題は、事故が起きた場合の損害賠償額が異常に低く設定されていることだ。
国が提供する原発事故に備える損害賠償責任保険のようなものがあるが、その限度額は原発1基あたりわずか1200億円。一度事故が起きれば、数十兆円単位のコストがかかることは、東京電力福島第一原発の事故で実証済みだが、それより2桁小さい。
また、昨年の能登半島地震でも露呈したが、原発の事故に備えた避難計画では、複合災害(原発事故と同時に地震や風雪水害が生じること)が考慮されていない。実際には実行不可能な計画になっているのだ。そうなる原因は、避難計画が原子力規制委員会の審査の対象外だからだ。