能天気な自民党右派と国民民主党

 しかし、こんなに簡単なこともわからない人々がいる。それが自民党右派や国民民主党などにいる能天気な原発推進論者である。

 先月アメリカにいたときに聞いた言葉だが、まさに「a fool’s folly」(愚か者の愚行)というのがぴったりではないか。

 もう一つ違った意味でまた「a fool’s folly」だと言える話がある。それは、「生成AIの普及に伴い電力需要が急増するので、それに対応するために新たな原発をつくる」という議論だ。

 確かに生成AIの普及に伴い電力需要は急増するであろう。省エネ半導体やさまざまな省エネ技術の発展もあるが、かなりの規模の需要拡大になるのは避けられない可能性が高い。

 世界は今、生成AI用データセンター(DC)ブームだ。日本でも国内企業のみならず、米テック企業も含めてDC建設計画が目白押しで、そのためのファンドやREIT(不動産投資信託)の組成まで始まった。

 すでに稼働中のものもあるが、今後建設される大規模なDCの稼働が集中し、大きな電力需要が生まれるのが、26~27年ごろになると予想され、電力需給は逼迫する。特に、脱炭素の要請が高まっているため、グリーン電力の確保は死活問題となる。

 日本経済新聞の「社長100人アンケート」(1月9日朝刊)で政権への要望を聞いたところ、期待する政策として最も多かったのは「再生可能エネルギー拡大」だった。一方、原発新増設は要望のトップ10にも入っていない。

 なぜそうなるかというと、生成AIなどによる電力需要の増大はもうすぐ目の前に迫っているのに、原発を新たにつくるとなると、完成するのは早くても15年以上先になるからだ。

 原発新設は40年代の電力需要に対応するという話だが、それだけ先の話なら、コストが高い原発にかける巨額の建設費や補助金の分を洋上風力を含めた再エネの拡大に投資すれば、はるかに安全で安価な分散電源ができる。

 生成AIの電力需要の爆発で今にも停電が起きるかのような騒ぎを起こし、そのために原発をつくろうというのは、はっきり言って、完全にピント外れの話なのだ。それは経済界もよく理解していることがわかる。

 以上述べたとおり、原発新増設は、軍事・安全保障面から見ても、また、産業・エネルギー政策面から見ても愚行でしかない。「a fool’s double folly」というところか。

 3.11を前に「愚か者の二重の愚行は止めろ!」と強く訴えたい。

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