結婚・子育てを当然とする社会のルールから自由になれた森下さん。50歳になった時、「微妙な自己肯定感が出てきた」と話す(イラスト:森下えみこ)

「老後どうするんだ」

 20代、30代は、周りと比べて、相手を羨むこともあったけど、年を取るにつれて「みんな頑張ってきたね」みたいな感じに変わってきています。なので「独身はこういうもの」と型を提示するのではなく、「こういう人もいるんだ」って思ってくれたら良いなと思います。

 毎日公園を歩いていることをSNSに投稿したら、「私も歩き始めた」という声が寄せられました。その時、私も誰かに影響を与える存在なんだって思いました。誰かのことを羨ましいと思っている一方で、自分も誰かから羨ましいって思われていたりもしているんですよね。

──ずっと住みたかった東京に住み、今の生活に満足感を得ている。その上で、将来感じる不安とどう折り合いをつけているのだろうか。

「独身は老後とかどうするんだ」ってよく言われるんですけど、「そんなこと言われても」という感想しかないです。老後、介護災害など将来に対する不安は消えませんが、何とかなる気がしてきています。最近は、不安に駆られたら外に出て歩いたり、走ったり。不安について悩み、考えても、解決することはないことに気づき始めました。

 50歳になった時、「生きたな」と思ったんですね。元々自己肯定感が低く「私なんて……」と思うタイプなのですが、50年生きたら、微妙な自己肯定感が出てきたんです。38歳くらいの時は、年を取るのが怖くて不幸なことだと思っていたから、50代になったらもっと不幸になるはずだと思っていました。

 でも、50歳まで生きてみたら、違いました。体力の衰えなど、今までと違う自分に気づく機会がすごく増えました。でも、それが良くないことかというとそうではなく、「へー!」と新鮮で。「こんなんじゃダメだ!」と思わず「じゃあ、ここからどうしよっかな」みたいに、変化に合わせて生きてみたいと思ったんです。

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