中野友加里さん(撮影/写真映像部・佐藤創紀)

就活に向けて記者に「逆取材」も

 大学院で勉強を続けるうちに、自分には研究職は向いていないと悟った。さらに、それまでもうすうす感じてはいたが、教員も含め「教えること」自体に向いていないと思ってしまった。

「自分自身、教わったら意地で短期間のうちに修得するタイプなので、人にも『教えたらできてほしい』と思ってしまうんです。せっかちなんですよね。そうなると先生だけじゃなくて、スケートのコーチも向いていない、クリエーティブに富んだ振り付けもできない。プロスケーターという道もあったんですけど、プロになったらいつかは滑れなくなってしまうし、滑れなくなっていく自分と向き合うのがつらいなと感じてしまったんです」

 オリンピックという明確な目標がありながらも、次のことをいろいろと考えてしまった。今でこそ1年休学して競技に専念するという選択も普通にできるが、当時はそういった選択肢を考えにくい環境だった。学費を出してもらっている親に対しての申し訳なさもあり、早く卒業しなければと思ったという。

「それで就職活動しなきゃ!と思って、大学院1年目の秋から冬にかけて就職活動をすることにしました。毎朝6時から練習の準備をしているときにフジテレビの『めざにゅ~』から『めざましテレビ』を見ていて、『この番組を作り上げる一員になりたい』と思いました。それに、フィギュアスケートの全日本や世界選手権など大きな大会を放送しているのがフジテレビだったんです。6分間練習中の選手が全員見られる6分割画面やアイスタッツ(リンクカバー率やジャンプのタイミングなどを可視化できる技術)など、いろんな新しいことに取り組んでいるなとも思って、私もここに入って勉強しながら放送に携わりたいと思ったんです」

 就活をすると決めたら、記者との関係性も変わった。自分が取材されたあとに「何分か時間いただいていいですか」とことわり、テレビ局や新聞社の記者に仕事の話を聞いて、メモを取った。いろいろと聞いた結果、やはりやりたいことはテレビにありそうだと考え、フジテレビ一本に絞って受けることにした。選考は他の志望者と同じ一般ルートで受けた。

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フジテレビ入社面接では全く気づかれず