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 比較的人口が少なく、輸出依存度が高い韓国経済において、「コンテンツ産業」が重要な地位を占めていることは周知の事実だ。だが、そのコンテンツの中で「稼ぎ頭」は何か、という問いに、正確に答えられる人は少ないだろう。

 K-POPをはじめとする「音楽」でも、韓国ドラマが牽引する「放送」でも、ウェブトゥーンが席巻する「漫画」でもない。そのコンテンツとは……。

 発売されたばかりの『今さら聞けない 現代韓国の超基本――ドラマ・文学・K-POPがもっとわかる』は、韓国の産業についても詳しく解説している。本から引用する形で、世界が注目する韓国の産業について、紹介したい。

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 韓国が世界に誇る産業を語るとき、欠かせないのは「造船」「鉄鋼」「ICT(情報通信技術)」、そして「コンテンツ」だ。

造船と鉄鋼

「造船」と「鉄鋼」は、世界でトップシェアを誇る韓国の主要産業。1970~80年代にかけて発展し、重工業に不向きと考えられていた韓国がそれをメインにした経済発展に成功したことから「漢江(ハンガン)の奇跡」と呼ばれた。

 造船業はイギリスを中心に欧州で発展したが、第二次世界大戦後は日本の成長が著しく、1950年代半ばには英国を追い越した。その日本のライバルとして浮上したのが韓国。赤字の時期も長く続いたが、付加価値の高い高性能船舶、なかでも環境にやさしい船舶の需要が好調で、現在は中国と韓国が世界のシェアトップを争っている。

 鉄鋼業の発展には、日本のメーカーが大きく貢献した。韓国最大の鉄鋼メーカーであるポスコの事実上の創業者で、韓国の鉄鋼王と呼ばれる朴泰俊(パク・テジュン)氏(1927-2011)は早稲田大学に学び、「韓国の発展に必要なのは製鉄所だ」と当時の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領を説得。日本との協力関係を取り付けて、1973年に高炉を完成させた。

 朴氏は、最大の理解者であり協力者だった元新日鉄名誉会長の稲山嘉寛氏(1904-1987)を、生涯の恩人として慕っていたという。ポスコは1998年、その新日本製鉄(当時)を粗鋼生産量でを追い抜いた。

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