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(遺族の許可を得て提供)
年間に300件程度の現場に行くという。何年続けても、現場に行くたびに心が痛くなる。亡くなった人の思いに寄り添い、残された人の苦しみもわかる。自殺の場合は過失が発生するため、原状回復の費用が家族や保証人に請求される。グッドベアの特殊清掃の費用は、亡くなった場所、臭いや汚れの程度などにより異なるが、最低7万円かかるという。
「先日は、車の中で自殺を試みたが死にきれず、部屋のベッドの上で首を刺して亡くなられた方の現場でした。ベッドのマットが体液を吸収して非常に重くなっていました」
発見が遅れれば遺体の状態はひどくなる。
「遺体はどんどん腐敗します。死後30~40時間程度で死後硬直が解け、細胞が分解され始め、腐敗が進みます。腐敗ガスが発生し、強い異臭を放ちます」
運動不足で栄養過多
近年は比較的若い世代の孤独死が増えているという。
「孤独死は65歳以上の高齢者をイメージするかもしれませんが、実は30代後半から50代半ばくらいまでの方も少なくないんです。その多くが引きこもりで、糖尿病や心臓病など内臓疾患が原因の病死です。そういう方の部屋に入るとデジタルツールがいっぱいあるんです。スマホひとつでなんでもできる時代。外出せずにネットで食事を注文して運動不足で栄養過多になる。病気になっても病院に行かず、そのまま亡くなってしまうんです」
宮田さんは、10年ほど前から孤立した人の見守りを目的としたサービスを始めている。行政の制約などにより強制的な介入の難しさを感じるが、それでも、ゴミや排泄物の臭いを確認することなどで、孤立した人の早期発見を目指している。たとえば、独居の高齢者は体力がどんどん弱くなると、トイレにも行けなくなり、ペットボトルに排尿したりする。異臭をきっかけに部屋を訪ねることができれば、孤独死の予防につながる。今後は、低所得者や生活困窮者の死後の手続きのサポートも行っていく予定だ。