AERA 2025年3月3日号より

 海運株はなぜこんなに調子がいいのか。バルチック海運指数に連動するイメージはあるが。

「今は地政学的リスクの上昇でコンテナ船の料金自体も上がっています。世界の分断が進み、『この海は通れない』となると迂回せざるを得ません。たとえば欧州とアジアの最短ルートだった『紅海』が危険で通れなくなると、スエズ運河を通らず遠回りするといった具合です。遠回りすれば距離は長くなり、運賃は上がる。海運会社ってこんなに儲かるんだと、素直に利益を認める形で買われています」

 海運株は利益で買われているが、鉄鋼株は「業界自体、今は厳しめ」と鈴木さんはいう。

「2位のJFE HD(ホールディングス)5.56%、3位の神戸製鋼所5.42%、7位の日本製鉄4.96%などは、24年の年間騰落率がマイナスです。株価下落の中、企業側は配当維持の計画なので結果的に利回りが上がっています」

 2月10日にトランプ米大統領が「鉄鋼・アルミ関税25%(例外なし)に署名」との報道。

「政府は日本の適用除外を申し入れましたが、今後は読みづらいです。ただ、米国の鉄鋼輸入はメキシコとカナダが多く日本の鉄鋼メーカーへの影響は相対的に小さめと見られます。ただ鉄鋼への関税による米国での物価への影響も無視できません」

 そもそも、世界の鉄鋼需要は「未曾有の厳しい状況」(日本製鉄 統合報告書2024)だ。

 最近は決算で「DOE(株主資本配当率)」が基準の配当政策を導入する企業も増えた。

「利益の何%を配当に回すかが配当性向ですが、DOEは株主資本が基準なので業績が多少変動しても配当がブレにくい。累進配当(配当が増配か前回同様を続ける)の会社もいい」

製薬2社高配当の理由

 そして、製薬会社。8位にアステラス製薬4.89%、10位に武田薬品工業4.66%。

「利益水準はでこぼこなので手放しにほめられませんが、配当は安定。アステラスも武田もPBRが1倍前後と指標的に割安でROEは1〜2%と低水準ですから、配当を緩めるわけにはいかないはず。経営陣を見る限り外資的な面もあり、株主還元は重視し続けるでしょう」

 船、鉄、薬以外のセクターではMS&ADを筆頭にした損保株、三菱商事などの商社株は調整。一本釣りで見るとソフトバンク、積水ハウス、ENEOS HD、キヤノンなどが株価上昇中かつ高配当(3〜4%台)でランクイン。一つ一つ調べたい。(経済ジャーナリスト・向井翔太、編集部・中島晶子)

AERA 2025年3月3日号より

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