AERA 2025年3月3日号より

 要するに、ビギナーは手出し無用のハイリスク銘柄、と。

「やはり初心者は、ある程度の配当がもらえる大型株から探しましょう。経済紙の調査結果ですが、主な上場企業約1千社(金融などを除く)の手元資金(バランスシート上の数字/現預金が中心)合計が09年3月期に50兆円程度でした。それが24年3月期に114兆円と、15年間で2倍以上になっています。直近5年は連続で過去最高記録を更新。お金だけ貯め込んでたいした設備投資もしていない企業は、これまで以上に株主還元を求められるでしょう。会社側も自社の株価が下がるのは嫌ですから、株主や市場の声を聞き配当や自社株買いを重視する方向です」

現預金と有利子負債

 中にはPBR(株価純資産倍率)1倍割れを脱出すべく、無理をして配当を出すところもありそうだが……着眼点は?

「利益が少ないのに配当性向が高い銘柄は疑問視していいかもしれません。『現預金が総資産の何%あるか』など、余裕をもって配当できているかを調べます。流動比率が高いか、財務の健全性もチェックしてほしい」

 初心者には難しそう。もう少し単純に「最初の一歩」を。

「現預金の比率が高い、無借金の会社。『会社四季報』を見て『有利子負債がないから財務健全性が高いかもしれない』『同業種と比べて自己資本比率が高いから、少し安心できるかもしれない』という感じで少しずつ調べてみてください」

 なお銀行などの金融セクターは業種的に有利子負債ゼロにはならない(念のため)。

 ここから紹介する「高配当株ベスト30」も、何も考えずに買うのではなく、自分なりに調べて納得したものだけを複数銘柄、業種も分散させつつ買おう。

商船三井6.43%

 SBI証券で25年1月に買われた全銘柄から「配当利回り3%以下」の銘柄を除外し、買い付け金額の大きい順に30銘柄をピックアップした。これら30銘柄を配当利回りの高い順に並び替えたのが「年初1カ月で個人投資家が買った高配当株ランキング ベスト30」=左の表だ。

 業種で見ると船(海運)、鉄鋼、製薬が目立つ。表には24年の年間騰落率も付した。「株価が上昇基調で配当も高い」か「株価が下落基調で相対的に配当利回りが上がっている」かの参考に。

「ここ何年かで海運株は定番人気となりました。1位の商船三井6.43%、4位の日本郵船5.32%、6位の川崎汽船5.07%は業績の方向感が酷似しています。というのも、この3社でコンテナ船の合弁会社を作っており、その利益が業績に直結しているからです。3社とも24年の年間騰落率は2ケタ上昇。以前はもっと配当利回り高かったんですけど(笑)。10%以上のときもありました」

AERA 2025年3月3日号より
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製薬2社高配当の理由