農業政策を抜本的に見直すべき時にきている

 しかし、依然として政府は、既存の農家や取引業者の保護を重視しているようだ。2月12日、江藤拓農相は年間約77万トンのコメのミニマムアクセス(最低輸入量)を縮小する方向で交渉を始めたと発表した。

 そうした政策は、国内農業事業者の成長を抑制するかもしれない。国内産のコメの価格が高くても需要があることは、わが国の農産品の品質は高いことを意味する。そうした強みを活かして、異常気象に耐性のある品種を開発する。あるいは収穫後の稲株を利用して秋に2度目の収穫を行う“再生二期作”を実現する。

 新しい取り組みにチャレンジする農業事業者の増加は、国内の需給バランスの安定化に寄与する可能性を持つ。高付加価値の農産物の生産は、付加価値ベースでのわが国農業の国際競争力向上にもつながるはずだ。

 備蓄米放出の効果が一巡した後、コメの需給が落ち着けばよいが、気候変動の影響など不確実性は残る。少し長めの目線で考えると、再度コメの価格が上昇し、相場の不安定感が高まる懸念はありそうだ。政府は、そろそろ本格的な農業政策の改革を目指すべき時にきていると考える。

(真壁 昭夫:多摩大学特別招聘教授)

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