アデリア・ペトロシアン(Russian Look/アフロ)
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 真紅の衣装をまとった17歳のアデリア・ペトロシアン(ロシア)は、『ブエノスアイレスのマリア』を情熱的に表現するフリーを滑り終えると、天を仰いで拳を握りしめた。涙ぐみながらリンクサイドに戻ってきたペトロシアンは、エテリ・トゥトベリーゼコーチに抱きしめられた。

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 昨年12月に行われたフィギュアスケートのロシア選手権・女子シングルで連覇を果たしたペトロシアンは、20日のショートプログラムでトリプルアクセル、21日のフリーではトリプルアクセルと2本の4回転トウループを成功させた。国内大会のため得点は国際スケート連盟(ISU)非公認だが、合計点は262.92というハイスコアだった。

 ロシア選手権は得点が高く出る傾向があり、単純に比較はできないが、この得点は坂本花織が保持する今季世界最高得点231.88を上回った。ペトロシアンがロシア選手権で得た演技構成点には9点台後半もあり、国際大会でいきなりこの点が出ることは考えにくいものの、高いレベルの演技だったことは間違いない。

 ペトロシアンがフリーの演技後に感情を爆発させたのは、ミラノ五輪への道がみえたからだろうか。

 ロシア選手権の会期中だった昨年12月20日、ISUは、ウクライナ侵攻の影響により北京五輪後の2022年3月1日から国際大会参加を認められていなかったロシア・ベラルーシの選手に、「中立な立場の個人資格の選手」として2026年ミラノ・コルティナ五輪予選への出場を認めると発表した。

 ロシアに与えられる代表枠は最大で1。ロシアの競技力を考えると五輪選考会(9月、北京)で枠を勝ち取ることはほぼ間違いなく、ロシア代表はミラノ五輪でメダル争いに絡む可能性が高い。

 ロシア選手権と重なる日程で行われた全日本選手権の女子では、坂本が優勝した。昨年12月20日に行われたショート後、ミラノ五輪にロシア代表が出場する可能性が出てきたことを記者から聞いた坂本は、現世界女王としての誇りをにじませた。

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注目集まるロシアのスケート連盟の“選択”