「以前は(ロシア代表が)三人だったので、『誰かの間には入りたい』という気持ちがあった。その気持ちがまた復活するんだなと思うと、めっちゃわくわくします。今はロシアだけじゃなくて、アメリカや他の国も強いので、強い選手がたくさんいる中で戦えるというのは、めちゃくちゃ燃えます」

 ペトロシアンは、2022年北京五輪金メダリストのアンナ・シェルバコワ、同銀メダリストのアレクサンドラ・トゥルソワを育てたエテリコーチに師事する。エリート集団で磨かれてきたペトロシアンのジャンプは美しく、フリーレッグを高く上げる着氷姿勢を見ると、これもエテリコーチの教え子であるカミラ・ワリエワが思い出される。

 優勝候補として臨んだ北京五輪開催中に持ち上がったワリエワのドーピング疑惑は、記憶に新しい。フィギュアスケートのロシア選手については、政治的な問題だけではなく、ドーピングの問題も絡んでくる。ミラノ五輪のロシア代表はウクライナ侵攻への支持を表明したことがないこと等が条件であることに加え、ドーピング違反についてもロシア以外の組織による検査が行われる。

 ロシア選手権2連覇中のペトロシアンだが、ロシアのスケート連盟が彼女を五輪選考会の出場選手として推薦するかどうかはまだ分からない(ISUへの選手名提出は、遅くとも今月28日まで)。ISUの条件に適う選手でなければ、五輪出場資格は得られないからだ。しかし、もしペトロシアンがミラノ五輪のリンクに立つのであれば、有力な優勝候補になることは間違いない。(文・沢田聡子)

沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。フィギュアスケート、アーティスティックスイミング、アイスホッケー等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。2022年北京五輪を現地取材。Yahoo!ニュース エキスパート「競技場の片隅から」    

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