
よって、国内で1億円以上を持っている人は知識レベルが高い人が多い。この点は米国と同じだ。
日本の博士号取得者はこれまで「足の裏の米粒(とっても食えない)」「高学歴ワーキングプア」などと揶揄されることもあったという。この結果から博士号の知られていない側面(コツコツと資産を増やしている人が多い)が見えた。
日米ともに国公立優位
日本のミリオネアの学費に関してはどうか。国公立大学卒が44.5%、私立が55.5%。全体では国公立が26.0%、私立が74.0%であり、米国同様にミリオネアは国公立の割合が高かった。
なぜ日米ともに国公立の割合が高いのだろう。
「さまざまな可能性が考えられますが、著書の中では『ミリオネアにはコツコツ型が多い』という仮説を、さまざまなエビデンス(根拠)とともに提示しました。
日本のケースに限って言えば、一般的に国公立、特に国立大学は入試における試験科目が私立より多い場合が多く、学力をコツコツ積み上げることが求められます。そういったことが苦にならない方が多いのではないでしょうか」
話を米国に戻すが、興味深い話題をもう一つ。高年収だった人たちが現在、経済的苦境に陥っている例が見られるという。
たとえば大谷翔平選手の契約金額が10年総額7億ドル(約1120億円)で話題になったMLB(米大リーグ)の平均年俸は400万ドル(約6億4000万円超)。だが、MLB選手が引退後に自己破産する確率は一般家庭の約4倍だそうだ。
超高給で知られるNFL(米プロフットボール)の選手が引退後に自己破産する確率は78%。NBA(米プロバスケットボール)は60%。
人間は意識しなければ、支出を収入ギリギリまで膨張させがちであり、これを「パーキンソンの法則」という。また、一度上げた支出レベルは、そう簡単に戻せない。これを「ラチェット効果」という。現役時代に高給だったのに、長期的な投資に回す資金を捻出できなかった可能性が高い。
(後編に続きます)
取材・文/向井翔太、中島晶子(AERA編集部)

