
「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害のある子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出合った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。
【写真】足が不自由な息子と医ケア児の長女を置いて「きょうだい児」の次女と二人旅 ケアを気にせずビールが飲めた
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2月上旬、5年ぶりにハワイに行ってきました。今回は次女との二人旅でした。コロナ禍を経て、現地はどんな風に変わったのだろうと思っていたのですが、結論から言うと何も変わらず、私が知っている景色のままでした。
今回はハワイ旅行のことを書いてみようと思います。
5年間の息子の成長を実感
前回ハワイを訪れたのは2020年 1月末でした。日本では新型コロナウイルスのニュースが出始めた頃でしたが、ハワイではマスクをしている人をまったく見かけず、現地ニュースは秋のアメリカ大統領選挙に向けた討論会ばかりでした。ところが、私が帰国した2月5日に横浜港にコロナの集団感染が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が入港すると状況は一変してしまいました。海外はとても遠い国になってしまい、いつの間にか毎朝チェックしていたUSドルのレートも見なくなり、大好きな「旅行」というものをすっかり忘れた数年間でした。
でもそれから5年が経ち、12月に次女が進学する大学が決まったタイミングで「高校卒業前にハワイに行こう!」ということになりました。夫は仕事のため留守番です。2月は入試休みがあり息子も連休になるので一緒に行くつもりでしたが、次女が中学入試のお手伝い(生徒会活動に関わってきた彼女にとって最後の委員会)がしたいと言い出し、飛行機が苦手な息子は「行かなくても良いなら行かない」と言ったため、入試休み期間ではない高3の自由登校時期に、夫と息子は残り次女と二人で行くことになりました。夜は夫が帰るとはいえ、これまでは足が不自由な息子を置いていくという選択肢はありませんでした。息子自身も自分だけ残ると考えたことも無かったと思います。5年の間にすっかり自立し大人になったことを実感しました。医療的ケアが必要な長女は、大学病院のレスパイト入院(介護者の休息や休養を目的とした短期入院)を利用しました。次女の受験が長引いた場合に備え、12月からこの時期の予約をしていたので安心して出かけることができました。