際立つのは、どの話にも存在する緊張感だと分析する。
「次のページで何を目にするのだろう?という期待感と、目の前にあるものを自分の想像力で補いながら読み進めることが真に恐ろしい効果を生む。それが海外でも受け入れられる理由だと思います」
不安が恐怖につながる
恐怖を生み出す伊藤さんにとって「恐怖」とはなんだろう?
「『死』は前提にあると思うのですが、それを予感させるようなもの、何かわからないものに出くわしたときに人は恐怖を感じると思うんです。『わからない』という不安が、恐怖につながるのではないかと思います」
いま伊藤さんが怖いのは「AI」だという。
「最近、シロクマと赤ちゃんがたわむれたり、海中でサメを女性がなでたりするAI動画を見たんです。まだ不自然なところも残っているのですが、どんどん精度は上がっていくでしょうし、子どもが勘違いしないかな?と思ってしまった。現実と虚構の区別がつかなくなるし、どこまでいくのかわからない。そういう存在は怖いですね」
「伊藤潤二展 誘惑」は4月19日~5月25日に青森県立美術館コミュニティギャラリー、6月1日~7月13日に福岡市科学館で開催される。世界を魅了する恐怖をぜひ体感してほしい。(フリーランス記者・中村千晶)
※AERA 2025年2月24日号
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