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令和に新たなホラーブームが到来し、映像作品も続々誕生している。ホラー作品が盛り上がる背景には何があるのか。AERA 2025年2月24日号より。
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映画においても、話題のホラー作品が公開中だ。近藤亮太監督の商業デビュー作「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」。第2回日本ホラー映画大賞を受賞した短編映画を長編化したもので、総合プロデューサーとして「呪怨」シリーズで知られる清水崇さんも名を連ねる。
子どもの頃に目の前で弟が失踪した経験を持つ主人公のもとに、母親からあるビデオテープが届く。そこに映っていたものをきっかけに、主人公は忌まわしい過去を辿るため失踪現場へと向かう、というストーリー。
印象的なのは、「静かさ」だ。テレビから貞子が出てくるような「衝撃的な」シーンが続くわけでもない。でも静かに、ずっと、すごく怖い。そう伝えると、近藤さんはこう応じた。
「うれしい評価です。二十数年の歴史がある心霊ビデオのような、幽霊の姿を映して見せるといったフォーマットは、誰もが映像を合成できる時代にはもはや驚きがなく、形骸化している。いまホラーを作っている人たちの共通認識だと思います。じゃあどうやってもう一回、『怖さ』を取り戻すか。今回の失踪=行方不明というモチーフは『行方不明展』とも共通しますが、これって行方不明自体が怖いわけではない。でも人がいなくなるという現実は存在するし、そこにいろんな想像ができてしまうことが怖いわけですよね。わかりやすく恐怖の対象がわっ!と出てくるようなものではない方向の、徹底して静かな恐怖表現。そこを突き詰めてやってみたいという思いはありました」
ネイティブ世代の活躍
もちろん、映画監督として「怖がらせてやりたい」という気持ちは強くある。
「願わくば、皆さんが私の映画で怖がって日常生活を怯えながら過ごしてほしいですが(笑)。ただ一緒くたに『怖い』といってもその感情は細かく分かれてますよね。ドキドキするものを怖いと思う人、日常の中で背筋がぞっとする感覚を怖いと思う人。私の映画も受け取り方はさまざまでしょう。でも、私が思うところの『怖い』はこの映画の中にちゃんとある。そこを味わってほしいという思いです」