ホラーが盛り上がっているという体感は、近藤さんにもある。
「『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』の劇場用プログラムや入場者特典に小説を寄稿してくれた背筋さんや『行方不明展』など、媒体問わずホラージャンルが定期的に話題になり続けている。『次にどんな怖いものが出てくるんだろう』というムードも常にある。これは間違いなく『ブーム』というやつなんだろうと思ってます」
背景には、何があるか。近藤さんは「単純に、一巡しているのかなと思う」と話す。
「いちばん多感な小学生くらいのときに、いちばん盛り上がっていた2000年代のJホラーをリアルタイムで見ていた人たち。つまり『Jホラーネイティブ』である私たちの世代が、ようやく世の中に作品を出せる年齢になった。かつ2000年代のブームを担った清水崇さんや高橋洋さんを始めとする方々も現役でヒット作を出している。つまりすごく層が厚くなった状態で、新陳代謝もようやくできたのだと感じています」
ついに制作の第一線に出てきたJホラーネイティブ世代。2000年代と違うのは「その全員が映画の世界に来ているわけではない」ということだと、近藤さんは指摘する。
「小説をやっている人もいれば、ウェブ、テレビ、YouTubeなど活躍の場はさまざま。お互いの作品の良いところを認め合い、フィードバックしたりされたりしている。そんな形の層の厚さを獲得できているところは、以前のJホラーブームと大きく異なる点です。生まれたときからJホラーがあった世代の人たちがJホラーを作ることで、ようやくホラーブームをもう一度作れている。そんな状況ではないかと思います」
(編集部・小長光哲郎)
※AERA 2025年2月24日号より抜粋
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