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アメリカとロシア
──トランプは戦争を止められるのでしょうか。
トランプ政権になり、今後ウクライナへの支援が止められる、あるいは抑えると見られています。しかし、もしトランプがウクライナの敗北が実はアメリカ勢力の終焉(しゅうえん)を意味するのだと気づけば、戦争をより深刻化させる危険性も出てきます。
戦争が再活性化することについては二つのシナリオが考えられます。まず、ドイツの軍事産業の活性化です。2月23日にはドイツ連邦議会(下院)の解散総選挙がありますが、アメリカがドイツの政権交代を活用し、ロシアとの戦争にドイツを巻き込むことに成功してしまうようなことになれば、これは深刻な問題です。ドイツの産業力は、アメリカよりもはるかに高いですし、ロシアにとって真の脅威になりかねません。そうなれば、ロシアも核利用を考え始めてしまうわけです。
それからもう一つは、アメリカの軍事産業の再活性化です。イーロン・マスクはテスラやスペースXを率いているわけですが、こうした最先端技術産業をアメリカが取り戻すべきだと考えている人々がいます。政権に近い立場にいるマスクがアメリカの軍事産業の復活を加速化させる可能性もあるわけです。ただ、これには時間がかかりすぎるでしょう。また、もしそうなった時には、世界の誰も太刀打ちできない中国産業が完全にロシアを支える側についてしまうでしょう。
──今後のシナリオは?
私たちがいま目の当たりにしているのは、経済面での戦争、対立です。そういう意味で、私は以前から「第3次世界大戦は始まっている」と言っていますし、経済面では多くの国がその“世界戦争”に巻き込まれています。
ただし、それは軍事的な戦争というわけではなく経済戦争です。軍事的な争いはまだ一部ですが、アメリカがドイツを巻き込むなどして、軍事対立が世界規模に広がってしまうと、戦争の終結はあっという間でしょう。それはロシアの極超音速ミサイルや戦術核の利用を意味します。アメリカ側の航空母艦などは、あっという間に破壊され、終結は悲惨かつ早いものになるでしょう。
戦争の長期化の本質は経済です。そして、今まさに私たちはその世界的経済戦争のまっただ中にいるというわけです。それはもう皆が経験しているわけですよね。生活水準が下がるといったことも、そのうちの一つなわけですから。そして、アメリカがまさにこの戦争に負けつつあるのが現状なのです。
(構成/編集部・三島恵美子、通訳/大野舞)
※AERA 2025年2月24日号より抜粋
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