李琴峰『日本語からの祝福、日本語への祝福』 (朝日新聞出版)
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「曜日」の曜は「星のかがやき」を意味しているんだ!

 台湾生まれの芥川賞作家、李琴峰(り・ことみ)さんは、名探偵コナンから日本語に魅了されました。

 2025年2月21日に発売された李さんのエッセイ集『日本語からの祝福、日本語への祝福』(朝日新聞出版)では、台湾にルーツを持つからこそわかる、日本語の面白さ、困難をふんだんに紹介しています。

 今回は、名探偵コナンとポケモンのゲームを通じて知った日本語の美しさを本書から 一部抜粋・再編集して特別に掲載します。

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『名探偵コナン』シリーズ最初の劇場版アニメ『時計じかけの摩天楼』はコミックで読んだ。吹き出しに入っている台詞(せりふ)は中国語に訳されていたが、絵までは修正できないので日本語のままだった。読んでいると、あるコマの描写が気になった。たしか会議のシーンで、壁にかけてあるホワイトボードには何故か天体と陰陽五行の名称を表す文字(月・火・水・木・金・土・日)が書いてあったのだ。一体何の意味だろうと首を傾かしげた。

 後で(中国語の)国語辞書で「七曜」や「火曜日」などの単語を引くと、それは曜日を表す言葉だと分かったが、それにしても不思議だった。中国語では曜日は「星期一(シンチーイー)、二(アー)、三(サン)、四(スー)、五(ウー)、六(リョー)」というふうに、数字で表されているからだ。「曜」とは「かがやく」の意味なので、なるほど日本では曜日ごとに輝く星が決まっていて、星期一は「月が輝く日」で、星期二は「火星が輝く日」、星期三は「水星が輝く日」なんだと思った。曜日が無機的な数字で表される自分の日常と比べ、漫画の中で描かれている国のほうがよほど神話的で、神秘的で、素敵な感じがした。

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ポケモンゲームから考える色を表す言葉