──作中では井伏鱒二「山椒魚」が印象的なモチーフになっています。
伊坂:読んだあと嫌な気持ちにならないようにしたいと思いました。「山椒魚」では岩屋に閉じ込められていた蛙が最後に「今でも別に、おまえのことを怒ってはいないんだ」と山椒魚に言います。僕はその一言に救われて、すごい好きだったんで、あれを使えないかなあ、と思って、「山椒魚」の壮大バージョンみたいな感じにしてみました(笑)。
──『楽園の楽園』はカラーイラスト入りで、短編でも長編でもない中編小説という、伊坂さんの作品の中では異色作です。
伊坂:中編にしてよかったと思っています。今はみんな時間がないし、僕も息子につられてユーチューブを見ていると、長い映画は気合を入れないと見られなくなってきました(笑)。それでもストイックに「これが小説なんだ」と長編を書きたい気持ちも強いんですけど、多くの人に読まれたいと思うと、読み応えがあってコンパクトなものにしていく手もあるかなあ、と試行錯誤ですね。今回は壮大な話だし、脱線しているエピソードもアクションもあって、3人の会話も楽しい。意外に盛りだくさんな小説になったと思っています。
(構成/ライター・仲宇佐ゆり)
※AERA 2025年2月17日号
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