──草原を歩くシーンから3人組の旅が始まり、いったいどこに着地するのかわからない楽しみがありました。

伊坂:僕は、面白いけど先が読めない話を書くことを目的に小説を書いてるんですよ。こうなったら、こうなるよね、と思われたくない。レールを敷かれたところを行くのは好きじゃないんです。

 たとえば、仲の悪い二人がいたら、「おまえも実はいいやつなんだな」と仲良くなるパターン、どちらかが死んでもう一人が後悔するパターンとか、よくあるパターンを思い浮かべた上で、それ以外を書きたいんです。

──確かに今回も予想もしない展開が待っています。先が読めないのは伊坂さんの作品に共通する特徴ですね。

伊坂:自分が新しいと思う設定とか世界を考えついた時、他に似たようなものがあったら、もう嫌になっちゃうんですよ。僕は当然のように同じパターンはやっちゃダメだと思って生きてきたんだけど、別に法律で禁止されているわけじゃない。だから、バレないかな、と思って前に自分で書いたパターンをサラッとやってみたことはあるんですけど(笑)、基本的にやりたくないんです。

アイデアが浮かぶ瞬間

──毎回、違うパターンを考えないといけないわけですね。

伊坂:自分が過去にやったパターンもやりたくないから、20年以上書いてくると、もうパターンがないんですよ。いいアイデアがひらめいても、あれと同じだなって思っちゃう。

 たとえば、危機からどうやって逃げるかという時に、『ゴールデンスランバー』だとあるものを使って注意をそらした。すると次からは、注意をそらすというパターンが使えないんです。それが縛りになっていて苦しいです。もう嫌なんです(笑)。アイデアが出てこないんです。でも、びっくりさせたいんですよね。

──アイデアはどこで、どんなふうに考えるんですか?

伊坂:喫茶店でノートに書いているとき、歩いているとき、あとは編集者とのディスカッションですね。フワッと浮かんだ時に、あ、これかな、みたいなのを決めて、そこを掘っていく感じです。あと、かなりフワッとしてるんですけど、こんなものが書きたい、というのが毎回あるんですよ。

次のページ
陰謀論あること前提に