無理やり出社は格好悪い「行きたい」オフィスに
出社回帰をした企業の中には、オフィスや福利厚生を充実させることで、社員が「行きたい」と思う環境を整えたところもある。
クラウド会計ソフト「freee」を運営するフリーの人事基盤本部・組織基盤部長である笠井康多さんは、次のように語る。
「20年3月から完全リモートワーク体制を整えたため、その利点は十分に理解していました。しかし、ベンチャー企業では創発が求められます。それが、リモートだとどうしても時間がかかり、『このままでは事業を拡大させられない』という課題意識があったのです。そこで、自由出社などを挟みながら、段階的に原則週5出社に切り替えました」
“平日は毎日出社”というと、かなり思い切った決断のように見えるが、あくまでも「原則」である。子育てや介護に追われる社員は週3出社でもOKで、エンジニアは業務の性質上リモートワークが多いという。それに、夏休みや冬休みには子連れ出社も認められている。
さらに、オフィスには全員分のデスクはないが、駄菓子屋があったり、プールバーのような会議室があったりするなど、テンションがあがる仕掛けがたくさんある。
「出社のメリットは社員たちも感じていたと思いますが、『無理やり出社させるのは格好悪い』という議論もありました。そこで出社したくなるようなオフィスを目指して、『たのしさダイバーシティ』というコンセプトを設けました。これによって会社に対する愛着だけでなく、『出社すればみんなに会える』という気持ちも育めるため、仕事のモチベーションアップにもつながります」(笠井さん)
出社とリモート、どちらが良いのかという明確な答えはまだ出ていない。しかし、場面ごとにどちらが適しているのかを的確に整理し、それぞれのメリットを最大限に生かす環境づくりが、これからの企業に求められている。
(編集者、ライター・千駄木雄大、編集部・福井しほ)
※AERA 2025年2月10日号より抜粋