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トランプ米大統領が再任して2週間あまり。「米国第一」を掲げて、高関税を材料に相手国と取引する「ディール外交」に世界が振り回されている。今後のアメリカや世界はどうなるのか。元駐ルクセンブルク大使で、内外政策評論(グローバル・ポリシー・グループ)主宰の小嶋光昭氏が寄稿した。
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トランプ米大統領は、2025年1月20日の就任式の日に紫色のネクタイを着用していた。オヤッと思った人もいるだろう。2017年の1回目の就任時においては共和党カラーの赤色のネクタイを着用し、今回の選挙期間中も常に赤だった。紫は民主党の青色との中間色で、米国においては、今回紫色のネクタイを着用したのは共和党の赤を基調としつつ民主党色も考慮し、対決色を弱め融和的な対応をするとの意向を示したものと見られている。
2回目のトランプ政権は、大統領選挙で事前の既存のマスコミ・世論調査に反し予想以上の差で民主党候補のカマラ・ハリス副大統領(当時)を下し自信を強めたことに加え、上下両院も共和党が多数を占めたため、主要ポストから官僚を排し、親しい経済人や共和党議員などで固め独裁的になるのではないかとの懸念もある中、それらを払拭すると共に、選挙期間中の徹底した民主党批判を改め、分断から統合への融和姿勢を演出したものと見られる。
だが同大統領の政策遂行においては、一方的譲歩は無いと見られるので、融和姿勢の真意は何か、反トランプ勢力との融和の狙いは何かが疑問となる。
2期連続8年を狙うのか
トランプ大統領の周辺や一部マスコミの間では、同大統領は次回、2028年の大統領選にも立候補し、連続2期8年を内々検討していると見られている。確かに、在任中に暗殺されたJ.F.ケネディ大統領や今回1期で敗れたバイデン大統領を除き、戦後、米大統領は2期連続8年務めるのが慣例ともなっている。トランプ大統領としては、何故自分は1期4年で止めなくてはならないのか、国民の支持があれば2期8年が当然ではないかとの疑問を持つのは不思議ではない。
だが、米国憲法の追加条項では「1人の大統領の最長任期は2期まで」と規定してあり、連続2期までとは規定していない。従ってトランプ大統領は既に1期務めているので、更に2期8年となると憲法を改正する必要がある。憲法改正のためには、上下両院でそれぞれ3分の2以上の賛成が必要だ。そうなると民主党の一部票が必要となってくるので、民主党との対決姿勢だけでは憲法改正は不可能なため、中間色の紫のネクタイを着用し融和策に転じようとしているのではないか。
故安倍晋三元首相の妻、昭恵さんをフロリダの別荘に就任前に招待したり、就任式に招待したりしているのも、単に旧交を温めるというだけではなく、故安倍元首相が2回目の政権に返り咲き8年近く長期に政権を維持したことから、その政治スタイルに共鳴しているからではないか。確かに行政の長として1期4年は短すぎる。他方で、12年以上は弊害が予想される。トランプ大統領が今後米国内でどのように融和策を演出して行くのかが課題だ。