
「元気で長生き」の秘訣はルーティンを守ること。だが、単調な生活は逆に老化を進めてしまう。抗加齢医学のエキスパートとして知られる、医学博士で慶應義塾大学名誉教授の伊藤裕さんは程よく「いいストレス」を感じられるルーティンを作ることを提案している。著書『老化負債 臓器の寿命はこうして決まる』(朝日新書)の中には、60歳を超えたら試してほしい「いいストレス」を生む五感の磨き方が数多く紹介されている。ルーティンにワクワクを混ぜるコツを本書から一部抜粋・再編集してお届けする。
* * *
老いた時の「労」━ワクワク感
老化は「負債病」です。人生という営みの中で起こる「ひずみ」によって生じ、放置しておくとどんどん蓄積して、生活を続けるうえで大きな支障になる。しかし、気を付けて努力すれば「返済」することもできる。つまり、老化は不可逆な宿命としての存在から、生活と地続きにあって「なんとかする」余地のあるものと、わたしは考えているのです。
年を重ねるにしたがって体をうまく「労(イタ)」わることが大切になってきます。高齢者では「老化負債」を「返済」する能力が低下してきますし、最初に老化を意識する中年の時期に比べると返済期間も短いので、溜め込まないように、その場その場で「老化負債」を返却することを心がけたいものです。
一番大切なのは、老化負債返済の基本に立ち返ることです。すなわち、なるべく自分自身の心身に合ったリズムを保つ生活、リズムを変えない生活を心がけることだと思います。そうすれば、ミトコンドリアは生きるためのお金、ATPを生み出し続けますし、また活性酸素の発生が低く抑えられ、遺伝子を傷つけることも少なくなります。この、遺伝子の傷を修復できなくなることこそ、負債の主たる原因なのです。
実際は、同じ人であっても、年を重ねるにつれて自分のリズムは変わっていきます。波動の振幅は小さくなり、また周波数は低下していきます。それゆえ、リズムを変えないでおこうとする努力があって初めて、リズムの変調に対して無理なく自然に合わせていくことができるようになります。