始まりは18秒の動画
ユーチューブが誕生したのは2005年2月。最初に投稿されたのはわずか18秒の動画だった。月日が流れるなかでユーチューブの存在感は増し、クリエイターとの関係も密になった。一つの決断が大きな影響を及ぼすようにもなった。
だからこそ、コー氏が個人的に大切にしていることがある。
「物事というのは、重要になればなるほど曖昧になりがちです。だからこそ大切にする原理原則をしっかり確認し、検討することが大切です。また、リスクへの許容度は人によって異なります。だからこそ私たちは自分たちの決定がどういった形で、どれほどの人たちに影響するのかを常に理解するよう努めるとともに、自分たちの大切にする考えを積極的にオープンにしていくことが重要です」
それは日々の生活や仕事にも通ずる考えかもしれない。コー氏はこんなエピソードを話してくれた。
マッキンゼーに勤めていたころ、コー氏は出産を経て、職場に復帰。娘が生後6カ月になったとき、週に4日間の出張が必要な業務を担当することになった。とてもではないが続けられないと退職を申し出ると、メンターからは「1泊して戻ってきて、赤ちゃんに会って、また戻ればいいんじゃないか」といった提案が返ってきた。
「前例のないことでしたが、パートナーにも相談し、チャレンジすることにしました。そんな生活を3カ月ほど続けていると、同僚の男性から『なぜ君だけ特別扱いなんだ』と尋ねられたのです」
そのとき、自分の状況や考えをオープンにし、周囲に相談していくことの大切さを実感したという。
クリエイターへの使命
「自分の考えを伝え、相談することで開かれる道もあります。私のキャリアを振り返ると、本当にいろんな人のサポートがありました。そして、その時々で与えられた役割から多くのことを学んできました。ハードなこともあったはずですが、振り返るとどの仕事もエキサイティングでとても楽しかった」
そんな体験があるからこそ、後輩たちには「直線的なキャリアにこだわらないでほしい」とも感じている。
「若い世代の人たちと話すと、『何歳までにCOOになりたい』『そのためには何をすべきか』といった相談を受けることがあります。でも、私にとってキャリアはとても流動的なものなんです。私のキャリアはマッキンゼーから始まりましたが、実はプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)が第1志望だったんです」