メアリー・エレン・コー(撮影/写真映像部・佐藤創紀)

「視聴習慣の変化にあわせて、テレビ画面からもチャンネル登録が簡単にできるようなボタンを設置するといったアップデートも行いました。さまざまなタイプのクリエイターが動画を通して自分のストーリーを語り、ファンにリーチできるようにしたい。クリエイターが理想とするフォーマットを整えるのも私たちの役目です」

 サポートするのは、すでに活躍しているクリエイターだけではない。ビジョンはあるものの形にできないといった潜在的クリエイターにも目を向ける。

言語の「壁」取り払う

「アイデアをテキストで入力すると背景映像が生成される『Dream Screen』という生成AIの試験運用を一部地域で始めました。クリエイターを支援し、表現の幅を広げる手助けになればと考えています。もちろん生成AIの活用と同時に権利保護にも力を入れることも欠かせません」

 昨年12月には、マルチ言語の自動吹き替え機能も実装した。専門用語や慣用句などはまだ“学習中”だが、日本語やドイツ語、ポルトガル語といった8言語を英語と吹き替えることができる。これにより活躍の幅を広げるクリエイターが増えているが、なかでもコー氏が目を見張るのが、斎藤アリーナさんだ。動画投稿を始めてわずか1年半で、チャンネル登録者1千万人を超えるクリエイターに贈られる「ダイヤモンド」の称号を手にした彼女の主な視聴地域の一つは日本だという。

「ショート動画が人気のとても若い女性です。日本のほか、インドネシアとインドのファンにもリーチしています。クリエイターが新しいツールを使ってファンを増やしていく道のりを伴走するのは、私たちにとってもわくわくする体験なんです」

 重視するのは個人にとどまらない。ネットフリックスやディズニープラスといった配信大手も今や「ライバルではなく、パートナー」だと言い切る。

「よく競争相手だと思われますが、良きパートナーです。ユーチューブはコンテンツ制作会社ではなく、視聴者が面白いコンテンツを見つけるための支援をするプラットフォームです。ネットフリックスは新しい作品をユーチューブで特集したりプロモーションしたりすることで、より多くの視聴者と出会うことができる。ビジネスモデルがまったく異なります」

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