芳根京子と「気づかれなくてもいい」

 さらに、16年度放送のNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」では、2261人の応募者の中からヒロイン役に抜てきされ、知名度が一気に上昇する。前出の編集者が言う。

「まだオーディションを受けていた若手時代、芳根さんの愛くるしい振る舞いやひた向きな性格が関係者たちを魅了。次々とメインの役を獲得していたため、ライバルたちから『オーディション荒らし』と呼ばれていたと報じられたこともありましたが、本人は落ちることもあったと否定しています。そんな芳根さんは、『役を演じる中で、芳根京子だということに気づかれなくてもいい。それが成功』といった考えを持つなど、作品重視の姿勢を貫いてきた印象。彼女から主演俳優特有のギラギラ感が感じられないのは、職人気質な部分があるからではないでしょうか」

 ナチュラルなキャラクターにファンも多い芳根だが、業界内では「べっぴんさん」以降の“ヒット作不足”を指摘する声もあるという。前出の編集者が話す。

「民放では18年放送のフジテレビ系月9ドラマ『海月姫』や23年放送の日本テレビ系ドラマ『それってパクリじゃないですか?』などで主演を務めた芳根さんですが、どれも作品自体の評判は良かったものの、放送当時は視聴率不振が話題になっていました。ただ、今作の『まどか26歳、研修医やってます!』はドラマ業界で“テッパン”と言われる病院モノですから、『べっぴんさん』と並ぶ彼女の代表作となるかもしれません」

演じる役柄の幅の広さも特長

 そんな芳根について、芸能ジャーナリストの平田昇二氏は次のように語る。

「芳根さんは、愛くるしいルックスとキャリアを重ねても変わらぬ透明感で男女を問わず多くのファンを魅了する一方、卓越した演技力と役作りなどの仕事に対する真摯な姿勢は業界内でも高く評価されています。土屋太鳳さんとのダブル主演を務めた映画『累-かさね-』と岡田准一さん主演の『散り椿』での演技が高く評価され、19年には『第42回日本アカデミー賞』の新人俳優賞を受賞していますが、その後もさまざまな作品で存在感を放ち、演じる役柄の幅の広さも特長の一つでしょう。私生活ではラーメンや日本酒、ビールなどをこよなく愛し、人気俳優になっても飾らない人柄で共演者やスタッフからも愛されているようです」

「まどか26歳、研修医やってます!」での“イマドキ研修医”役が反響を呼んでいる芳根。唯一無二の存在感を放つ正統派俳優として、ますますファンを増やしそうだ。

(小林保子)

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