閣議で演説するルカシェンコ大統領=国営ベラルーシ第一チャンネルより

 ルカシェンコ氏の「心がわり」の背景には、ロシア経済の「過熱」もあるようだ。ウクライナ戦争のため、ロシア国内の主要な軍需工場は24時間操業。軍需景気もあり、2024年は3.9%の経済成長率をロシア政府は見込む。しかし、「停戦」を掲げるトランプ米大統領の登場で、戦争が終わる可能性が出てきた。西側の経済専門家の間では、「戦争が終われば、軍需がしぼみ、一気に景気は冷え込む」との見方も根強い。

ベラルーシは、ロシアがウクライナに戦争をしかけた後、西側諸国から制裁を受けている。独立系ジャーナリストによると、ルカシェンコ大統領の口癖は「制裁など気にするな」だというが、本心は違っているようだ。

ルカシェンコ大統領自身、「西側は我々と経済協力する意図はないようだが、我々の利益にかなう西側諸国とは討議し、協力の合意を結ぼうではないか」と閣議で述べている(1月18日)。

こうした発言は、ベラルーシ大統領選を意識したキャンペーンも意図しているようだ。ルカシェンコ氏は続けて、「他の4人の大統領選候補は、正確な情報を持たず、それを持つのは現職(の自分)だけだ。我々にとり主要な市場はロシアだ。その市場が2025年、極めて厳しい状況になることを知らねばならない」

そして、病院や幼稚園、防風林などの公共インフラをめぐるベラルーシの25年予算について、担当閣僚に対し、「無駄遣いを止めるように」と指示した。

  ベラルーシ語の独立系メディアBelsat(1月16日)によると、2024年、ベラルーシで食料品は7.2%値上がりし、インフレ率は5.9%だった。今月14日にも、ルカシェンコ氏が商業担当大臣に対し、「私企業をコントロールし、物価をあげるな。価格はロシアとの交易で形成されるものということは分かっているが」と述べる映像が国営テレビで流された。

 「ロシアの将来像」を警戒するそぶりは、「政治犯の一部釈放」にも表れている。

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現地メディアで「日本人を拘束」