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欧州最後の独裁者。こう呼ばれるベラルーシのルカシェンコ大統領が「弱気」を見せている。ロシアと同様、反体制の政治犯を多数投獄しているが、その釈放も続く。唯一の同盟国ロシアがウクライナ戦争で経済難に見舞われるかもしれない――。そんな懸念もほのめかすようになっている。20日に米国の大統領に就任したドナルド・トランプ氏はロシアとウクライナの戦争を早期に終わらせる考えを明確にしているからだ。トランプ就任の余波でいったい何が起きるのか、ベラルーシに不当逮捕された経験のある日本人や有識者らに話を聞いた。

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「(ウクライナのゼレンスキー大統領は)ディール(取引)したいと伝えてきている」「(プーチン氏は)取引しないことでロシアを台無しにしている」

 トランプ氏は20日、ウクライナ情勢についてこう述べたという。早期停戦を求めるメッセージであることは明らかだ。ロシア、ひいてはその同盟国がトランプ氏の姿勢を無視することは不可能だろう。

 ロシアの同盟国であるベラルーシは人口約900万人の国。ロシアの西隣に位置する。ソ連崩壊後の1991年に独立した。94年以来、30年にわたり君臨するのがルカシェンコ大統領。26日に大統領選を控えている。

 ルカシェンコ氏は、ロシアと国家連合を組み、ロシア軍にウクライナへの攻撃拠点を提供もした。そのロシアの「最大の理解者」であるはずのルカシェンコ氏が、2024年末、首都ミンスクで開いた閣議で、ロシア経済への懸念を強調した。

「ロシア経済の重要指標をみると、我々はきわめて慎重にならざるをえない。2025年の成長予測は、彼ら(ロシア)によると、(今年の約半分の)1.5%から2.5%だ。ロシアでは、銀行の貸し出し金利は二重構造になっている。また政府予算の赤字も今後、大幅に拡大する」

二重構造とは、ロシア中央銀行が設定する公定金利(21%)をよそに、ロシアの民間銀行がそれよりはるかに高い貸し出し金利を設定し、民間セクターの成長を妨げている事態を指すとみられる。

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