ベラルーシの人権団体「春」の報告書より。水色が元政治囚、濃い青が拘留中の政治囚

 ベラルーシの人権団体「ヴャスナ(春)」によると、2024年後半、計227人の政治犯が釈放された。

 さらに、今月9日、2020年の前回大統領選に立候補した後、逮捕され、約600日間、消息を絶っていた野党政治家の短いインタビューが、国営テレビに現れた。翌10日も、著名な人権活動家のコレスニコワ氏の獄舎を、その父親が訪ねる映像が流された。

これらの理由につき、ベラルーシ人政治学者、A・シュライブマン氏は独立系メディアのインタビューに、「政治犯の釈放は、その後、西側から反応がなかった。そこで、著名な政治家や人権活動家の映像を流すことで、西側との関係改善の糸口を探っている」と述べた。

 しかし政治犯の釈放も、シュライブマン氏は「ポーズにすぎない」と述べる。人権団体「春」によると、今年の釈放人数の数倍にあたる政治犯1265人がまだ獄中にいる(2024年)。これまで釈放された元政治囚は累計2488人にのぼるが、釈放後も秘密警察による監視が続く例があるという。いずれも、ルカシェンコ独裁体制の民主化を求める政治家、活動家やジャーナリストらだ。

また、2人の日本人が昨年、ベラルーシ当局に「スパイ」などとされて、不当逮捕され、拘留されたままだ。

「獄中の監視態勢は強まっています」

 かつて1年9カ月もベラルーシの獄中にとどめ置かれた、会社員吉田ダイチさん(34)=埼玉県在住=は、こう指摘する。

 吉田さんは冤罪だった。武器などのアンティークに興味があり、2016年、ウクライナを訪問した際、鉄砲の部品を切断した破片を購入。キーウからベラルーシのミンスク経由で日本に帰国する際、トランジットのミンスク空港で「武器の移送」を禁じるベラルーシの刑法に違反したとして、突然、逮捕された。鉄砲の部品はアンティークで、かつ切断されていたため、使用不能だった。しかし、ベラルーシの裁判所は4年6カ月の実刑判決を言い渡した。日本国内でニュースになった形跡はないが、現地メディアでは確かに「日本人を拘束」という見出しで吉田さんとみられる男性の逮捕が報じられていた。

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刑務所の中はどうなっている?逮捕された日本人に取材