獄中では、壁新聞にイラストを描く仕事を与えられ、その画力もあってか、模範囚になれた。2018年5月、最高裁が突然、4年6カ月の判決の「変更」を言い渡す「判決変更文」を出し、釈放された。そこには素行の良さ、も理由にあげられていた。一方、吉田さんは「ルカシェンコ大統領以外に、判決の書き換えを決められる存在はいない」と刑務所の関係者から聞かされた。
「食事が粗末で困った。それを補うため、食料を差し入れてもらったり、刑務所内の売店で購入したりした。ところが、食料の持ち込みが以前より難しくなっているようなのです」
吉田さんは今も服役中の元「仲間」と連絡が取れているという。「かつてはなかった監視カメラが各部屋に備え付けられ、ベッドに横になる様子まで撮られている」と聞くという。
吉田さんとたまたま拘置所で一緒だった、ユダヤ系ジャーナリストのA.ラプシン氏は筆者の電話取材に「彼が釈放されたのは、ルカシェンコ大統領が日本との経済関係の深化を求めていたタイミングだったからだろう。そのためには、その存在が『障害』になっていたのだろう」と解説する。
ラプシン氏自身も反政府的な姿勢が問われたのか、吉田さんと同時期に不当に逮捕された。
「ルカシェンコにとって、囚人たちは監視し、操作し、取引材料にするための存在にすぎません」
トランプ氏の大統領就任で、西側諸国とのディールを試みる気配もあるルカシェンコ氏。しかし、西側の指導者で、ロシアの戦争を支えてきたルカシェンコ氏と「取引」を真剣に考える人はいるだろうか。また、ルカシェンコ政権は、他の日本人2人を「スパイ」にしたてて拘束している。彼らは釈放されるのか。
ラプシン氏は「現在、2人の解放は簡単ではないと思うが、国際社会が関心を持ち続けることが大切だ」と話す。経済状況、獄中の人権状況といった、ベラルーシをめぐる様々な情報を入手することが求められている。(岡野直)