ギフテッドの中で最も多数派のIQ130前後の子どもたちへの教育をそんなにがちがちに構えないでほしいなと思います」

 そう話す角谷教授が、ヒントになりそうな1本の動画を紹介してくれた。ギフテッドの子どもたちが授業を受ける14分の動画だった。

 イギリスのある学校。5~6人の幼い子どもたちがグループになり、教員とアルファベットが書かれた絵本を手にたどたどしく読み上げる。もう少し大きな子どもたちのクラスでは、1枚の絵を見ながらどのようなシチュエーションなのか想像を繰り広げる。算数の授業では、数字が書かれたカードを手に九九を学ぶなか、2桁のかけ算の方法を発表したあどけない表情の男の子もいた。

「ギフテッドが特異な才能や深刻な困難を顕著に併せ持つと構えすぎて固まってしまう先生もいるかもしれませんが、かなり身近にいそうな子どもだと感じてもらえるのではないでしょうか。他の児童よりも少し進んでいる場面もありますが、今の教育体制でもできそうだなと感じる要素がたくさんあるはずです」

 知的レベルや関心のあることが似た子どもたちを同じグループにして活動してみると、どのレベルの子のグループでも、学習効果を上げることが実証されているという。

 例えば、授業中に関係のない本を読んでいる子どもがいた場合、どのように声をかけるのが正解だろうか。

「本をしまいましょう」

「今、何の時間ですか」

 そんな声かけが想像つく。だが、こうした声かけは追い詰めることになるのだという。

 そうではなく、今読んでいる本と授業の内容を結びつけて質問してみたり、授業の中身に少しレベルの高いものを入れてみたりするなどで反応は変わってくるそうだ。

「もちろん、授業中に関係のない本を読んでいてよいということではなく、その望ましくない行動をなくすには、どのように働きかけたらよいのか、どのような環境設定をしたらよいのか工夫する必要があるということです」と角谷教授は付け加えた。

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退屈な時間をやり過ごす行動