「でも、芸能界は小さい頃からの夢でした。芸能界だから自分のコンプレックスを話す機会をいただけたし、そうでなければもっと悩んでいたと思う。自分がこうやって話すことで誰かを少し元気にできるなら、こんな性格なのもちょっと良かったと思えるかも」

 本書を読み進めていくうちに井上さんを応援したくなってくるのは、壁にぶつかり悩むと、そこで尻込みするのではなく、行動にうつして突破していくからだ。太眉を剃ったのも、仕事に行き詰まりを感じていて、変わるチャンスだと思ったから。マラソン、料理、昆虫食、選挙と多趣味なのは、仕事のための武器がほしいと積極的に探しにいったから。昨年のアメリカ大統領選は、自分の目で現場を見たいと、11月にニューヨークへ飛んだ。そうやって自分の体を通して感じたことを咀嚼しながら、井上さんは自分が何者なのかを少しずつ見つけていく。

「自分で選択していける人になりたいですね。自分の選択に自信が持てる人になりたいし、選んだことに責任を持ちたい。誰かの力を借りるのではなく、喜ぶのも、落ち込むのも、自分が選択したことでがいいです」

(編集部・大川恵実)

AERA 2025年1月27日号

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