いのうえ・さくら/1999年、栃木県生まれ。2015年にホリプロタレントスカウトキャラバンで特別賞を受賞。テレビで活躍するほか、ユーチューブチャンネル「井上咲楽 Sakura Inoue」を開設。著書に『井上咲楽のおまもりごはん』(主婦の友社)がある(写真/荻原大志)
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 AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。

【写真】井上咲楽さんの初エッセイ

 『じんせい手帖』は井上咲楽さんの内気だった小学校時代から、タレントとして活躍する現在まで、悩みや葛藤、生きづらさなどを赤裸々に綴ったエッセイ。親友や、藤井隆さんのインタビューも収録。藤井さんは井上さんの「内面にある硬質でゴツゴツしたものが魅力的」だと語る。井上さんに同書にかける思いを聞いた。

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〈「生きるの、向いてないなあ」 私は1日に何度もそう思う〉

 のっけからこんなネガティブな言葉で、井上咲楽さん(25)のエッセイ『じんせい手帖』は始まる。

 井上さんと言えば、フリーダ・カーロのような太い眉毛で、芸人顔負けの明るいキャラクターという印象が強かったから、ちょっと意外に思う。そのトレードマークだった眉毛を番組の企画で整えると、激変した姿が「かわいい!」と話題になり一気にブレイク。今では「新婚さんいらっしゃい!」(ABCテレビ)のMCを藤井隆さんとつとめ、日本郵便などのCMにも出演し、はたから見たら順風満帆に見えるのだけど、素は根暗で、悩んでばかりなのだと言う。

「昔から何かできないことにものすごいコンプレックスを感じてしまうんです。否定されることが苦手で、否定されたときに跳ね返せるほどの自信がついてない。それに期待されるとそれに応えなくちゃとすごく思ってしまうから、最近、できないことに対して予防線の張り方がとんでもなくひどくなってきてます」

『じんせい手帖』(1760円〈税込み〉/徳間書店)内気だった小学校時代から、タレントとして活躍する現在まで、悩みや葛藤、生きづらさなどを赤裸々に綴ったエッセイ。親友や、藤井隆さんのインタビューも収録。藤井さんは井上さんの「内面にある硬質でゴツゴツしたものが魅力的」だと語る

 自己評価は高いのに、自己肯定感が低いと自分を分析する。この本ではそんな井上さんの“陰キャ”な一面をさらけ出しているが、本の制作過程でもまた落ち込んだ。

「本のために過去のことを振り返ったんですけど、当時は変だと思ってなかった自分の行動が、友達から見たら衝撃的だっただろうな!とか。あの嫌な思い出の原因は、自分も悪かったんだと気づいたりして、そういう瞬間はなかなかしんどかったですね」

 キラキラした人が大勢いる芸能界に身を置いていることも、他者と自分を比べてしまい自己嫌悪に拍車をかける。

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