トランプ大統領(写真:アフロ)
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「米国第一」を掲げるトランプ氏が大統領に就任した。世界はどのように変わるのか。日本はアメリカとどう向き合えばいいのか。AERA 2025年1月27日号より。

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 戦後80年、米国は多くの犠牲を払って自由と民主主義を守ってきた。だが、「世界の警察官」であることに米世論の支持が得られなくなった今、トランプ氏が各国に応分の負担を要求するのは自然な流れでもある。ウクライナでも、中東でも、米国が「紛争から手を引く」大きな流れのなか、各国がどの程度、責任を共有し、妥協できるかが試される。

 トランプ氏が再登板したからといって、トランプ氏の発言ばかりに注目しても、世界に存在する問題の解決策を見いだすことはできない。むしろ米国頼みの姿勢を改め、トランプ氏以外の世界に目を向けて、自ら解決策を探ることを考えた方が建設的なのかもしれない。

 これまでの秩序が、圧倒的な軍事力を後ろ盾とし、その行使を躊躇しない「恐怖による支配(米国による支配)」だったとすれば、これからは各国が連携する「多数派による支配」になる。そう見るのは、元インドネシア大使で学習院大学特別客員教授の石井正文さんだ。

 米国主導の世界では「バードン・シェアリング」(負担の共有)が議論されたが、これからは多数派形成による「チャレンジ・シェアリング」(課題の共有)が必要だという。

 石井さんは、主要7カ国(G7)の外側に、常任のパートナー国として韓国、豪州のほか、グローバルサウス(新興・途上国)の国々を加えることを提案している。日本はASEAN(東南アジア諸国連合)やインドとの関係が重要性を増す。

 たとえばフィリピンのようにトランプ氏の視野に入りにくい国の平和をどう守るか。国家だけでなく、企業や市民の連携をどう広げるか。そこに心を砕くことが日本の存在意義を高め、多数派形成にも資する。

 その際、日本が平和国家としてどこまで軍事に関与するかも論点になるだろう。日米同盟を基軸としつつ、日米の枠を超えて、どんな協力関係を築いていくか。それが日本の将来像にもつながるかもしれない。

 一貫性がなく予測不能なトランプ氏の言動に振り回されるだけでは、世界の混迷は深まるばかりだ。石井さんは「もはや米国がリスクをとってすべてを解決する時代ではない。米国が抜けた穴をどう埋めるか。それを日本が考えることが日米関係にもプラスになる」と話す。(朝日新聞記者・小村田義之)

AERA 2025年1月27日号より抜粋

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