イラスト:サヲリブラウン
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 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 突然ですが、今年、私の仕事のピークは3月にきます。フリーアナウンサーの堀井美香さんとやっているポッドキャスト番組「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」日本武道館公演があるからです。

 武道館!? 自分たちで決めておきながら、舞台の真ん中に堀井さんと二人で立つ姿が想像つかぬまま年を越しました。しかし、あっという間に1月も下旬。開催まで残り2カ月を切っている!

 しかも、ありがたいことにチケットは完売。8千人の互助会員(リスナーの総称)が全国各地から集まってくれるわけです。「まあまあ愉快なおばさん」程度の我々に、8千人のお客さんをもてなす術はあるのか? 少なくとも芸はありません。

 それでもイベントを開催するのには、理由があります。緊張や警戒のない安全安心な場所で、互助会員さんたちが伸び伸びできる時間を提供したいからです。

 堀井さんとひざを突き合わせて語ったことはないけれど、突き詰めればおそらく同じことを考えているはず。

イラスト:サヲリブラウン

「OVER THE SUN」では、堀井さんも私も自由に伸び伸びおしゃべりをしています。役に立つ情報を提供することもないし、同じ話を何度もしたりもする。それでも、この人たちはポンコツだなあと笑って聴いてくれる人がいたらラッキーと思い始めた番組ですが、我々がリラックスしている状態が「これでもいいんだ」と、他者に驚きと自己肯定感を与えているようなのです。そりゃびっくりしますよね。中年女性って、世間ではもっとしっかりしてないといけないイメージだもの。でも、現実はそうもいかないではないですか。

 大人になれば自分で自意識をコントロールできるようになりますが、それは緩やかに自己受容ができるようになっただけの話。もっと頑張らなきゃとか、これでは不十分だという気持ちが完全に消えたわけではありません。そこに日々の疲労が重なるわけで、毎日をつつがなくやっていくのは、まあまあしんどい。

 そんな時、私たちの無駄話が誰かの気持ちをほぐせていたなんて。番組開始当初には思いつきもしなかったこと。

 そういう時間を、武道館でも提供できたらいいなと思っています。ここには居場所があると思ってもらえたら幸甚。

 AERAともムック本でコラボするので、お楽しみに!

AERA 2025年1月27日号

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