副題は「穂村弘が聞く馬場あき子の波瀾万丈」。歌人の半生をインタビュー形式で浮き彫りにする。
 実母が結核を患い、祖母と継母に育てられた馬場。現在でもみなし児のような〈孤〉の感覚があるという。無口で友達も作れず、やや自閉気味な子供だったが、それを気にかけることもなかった。焼け野原で校舎さえもない大学の風呂に入り、講義を受ける。教員として新仮名遣いを苦労して覚え、第7歌集までは新仮名表記で出版。安保闘争のデモに通い、社会派の女流歌人といわれるも職場を変わるよう促される。両手をついて婚家の家族と暮らす家を出、若手を中心に集った短歌結社から独立。そして歌の前衛的な手法を探る中で、能の型と、体を支配することばのリズムを学び、短歌と融合させる。精力的な生きざまが刺激的だ。

週刊朝日 2016年9月23日号

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