俳優・シンガーソングライター:松下洸平
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「やりたいこと」でスケジュールが埋まっている日々を駆けてきた松下洸平さん。経験と実力を積み重ねた今、長く仕事をするために必要なこととは。AERA 2025年1月27日号より。

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 丁寧で、物腰は柔らか。その姿勢はいついかなるときも変わらない。この日も撮影スタジオに入ると、蜷川実花さんはもちろん、スタッフひとりひとりと視線を合わせて「よろしくお願いします」と頭を下げた。

 本誌表紙への登場は2023年6月以来、3度目。リラックスした空気の中、撮影はスタートした。

「自分で言うのもなんですけど、以前の表紙とは顔つきが変わったかなと感じます。ここまでいろんな経験を積ませていただいてきましたし、少しは頭の中に余裕が出てきたのかな」

 昨年もまた多忙を極めた。ドラマ、舞台、音楽番組、エッセイの執筆など、活躍の場は広がる一方だ。ドラマ「放課後カルテ」(日本テレビ系)ではついに地上波ドラマ単独初主演。繊細な演技は一段と磨かれ、存在感が増している。

「真ん中に立つ人にしかわからない気持ちがあると実感しました。今はこの立場を任せてもらえるようになったうれしさより、真ん中に立つ覚悟をこの先も持ち続ける重圧のほうが強いかもしれません」

 1月22日からは世界初演となるミュージカル「ケイン&アベル」に主演する。

「のんきなことは言っていられないほどに大変だし、プレッシャーもあります」

 そう言って表情を引き締める一方で、楽しそうに歌声を披露してくれるなど、新たな挑戦にワクワクする気持ちを抑えられないようにも見えた。

 3月には本誌で2年半続いた対談連載「じゅうにんといろ」をまとめた書籍の発売も控える。スタッフとひとつひとつの撮影の思い出話で盛り上がるうちに、連載終了の実感が湧いてきたのか、「寂しいですね」とこぼした。

 スタジオを出るとき、にこりと微笑んで声をかけてくれた。「けど……、また会えますね」。確かに、その数週間後に本誌スタッフとの別の撮影が控えていた。仕事を、現場を、心から楽しんでいるからこその言葉。松下洸平が良い作品を作り続けている理由がわかった気がした。(編集部・秦正理)

AERA 2025年1月27日号より

AERA 2025年1月27日号

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