中学受験、高校受験ともに合理的配慮申請の経験をしたのは、現在高等専門学校(高専)に通う男子学生だ。中学受験の勉強をしていた6年生の時にディスレクシアの診断を受けたが、そのまま受験勉強を継続。入試で配慮は受けられなかったが、入学後、配慮の相談を約束してくれた私立中学を受験し、合格した。
ところがその後、中学から連絡があり、こう告げられた。「受かる学力があるので、あなたはディスレクシアではない。配慮もできない」。すでに小学校でタブレットを使用していたため、私立中学への進学を諦め、公立中学に入学した。
中学では自分に合う学習法を探すために、あらゆる配慮を試した。ノートパソコンで板書を写し、定期テストでは、その場で提出するためプリンターを使用。英語を読むことに相当な困難があったため、アイマスクを使ったこともある。聞くことに集中し、耳から学ぶためだ。
中学2年の時に、第1志望と決めた高専のオープンキャンパスに母親と参加した。配慮に関する話し合いが実際に始まったのは、3年生。高専には、中学校側から連絡を入れてもらった。しかし、受験がせまった1月に、「配慮不可」の連絡が届く。男子学生は、その書類に記載されていた電話番号に電話をかけた。もう一度、話をしたいと思ったからだ。
「担当の先生と話してみると、どうやらディスレクシアについて、うまく伝わっていないようでした」
これまでは、母親が中心となって話をしていたが、今度は自分の言葉で説明をした。どのような困難があるのか、どのような配慮が必要なのか、中学で受けている配慮は何か。当事者でなければ、うまく伝えられないことがあるとわかったからだ。
時間延長と問題用紙・机の拡大
数日後、英語、国語の時間延長、問題用紙の拡大、机の拡大が認められた。
「小学校の頃から、親ではなく、自分が配慮を求めた方が通りやすいと感じていました。受験の配慮も、結果的には自分で説明したことで受けられることになったのです」
現在は、ほぼ全員が、パソコンやタブレットでノートを取る高専の教室で、もはや特別視されることはないという。(ライター・黒坂真由子)
※AERA 2025年1月20日号より抜粋