自分の得意に全力投球
8割を超える生徒がクラブに所属。数学や物理、情報など様々な国際オリンピックに出場しては、各賞を受賞している。
「科学オリンピックでもメダルをたくさん取ってきますが、もう教員は一切関与していません。先輩からのアドバイスもあり、生徒同士の自主ゼミのような学びが盛んです」
一人でメダルを四つ取った生徒もいるが、それを称える垂れ幕などは校内に見当たらない。
「生徒個人の成果ですから。始業式の表彰は、神戸地区大会も国際大会も同じ扱いです」
大切にするのは、意欲や粘り強さ、協調性など数値化できない「非認知能力」をいかに高めるかだ。それが、大学入試の突破力にもつながっている。
指導方針を決めたり、6年間を区切ったりすることもない。「自由」こそが灘らしさで、校則もない。それは教員も同じで、授業は一人ひとりの裁量で行われるという。
「でも、自由には責任が伴います。6年後にちゃんと生徒が志望する進路に進めるのかという結果を背負っているんです」
知的欲求にあふれた生徒に応えるべく、教材研究や授業準備にも余念がないという。
受験でも大会でも目覚ましい「結果」を次々に打ち出す灘の生徒たち。持てる力を出し切っているのかと思いきや、そうではない。大切にするのは、校是の一つ「精力善用」だ。
「相手の力を利用して投げる柔道の原理から出た言葉で、持っている心身の力を最も有効に使いなさいという意味です。極端にいえば、風邪をひいたらしっかり寝て休む、ということです」
無理をして学校に出てくるのは精力善用ではないからと、灘には皆勤賞もない。
「いろんな刺激があるなかで、それに取り組み、得意分野を伸ばしていく。全方向に頑張ってもダメなので、自分にとって有効なものを6年間で見つけることが大事です」
(編集部・福井しほ)
※AERA 2024年3月18日増大号から。合格者数は本誌とサンデー毎日、大学通信の合同調査を基にした速報値で、数値は今後変動する可能性がある。合格人数には推薦合格も含む